シグを監禁してみた



隣のクラスの水色の髪をした少年がただならぬ魔力を秘めていると感じ、拉致・監禁し、観察してやろうと思った
研究するに伴い、毎日の観察日記をつけようと思う
とても楽しみだ

*****

少年は森の中にいた。幼稚園か小学生の子供のように生き生きと走り回っては虫を捕まえて無邪気に喜んでいる。
森の光の中で佇むその姿は無垢で、汚れがない。あどけない微笑みで生き物を愛でる様子は例えようがないほど美しい。

だがずっと見ていてもしょうがない。早速行動にでようと思う。

とりあえず虫に気が向いている間に後ろから魔導をかけて動けなくし、薬で眠らせてから自宅の地下室に連れていった。しばらく目を覚まさなかったので楽なものだった。
その間に鎖に繋いでその上に束縛の魔導をかけてやった。目が覚めた時が楽しみだ。

1日目
目が覚めたようだ。いつものぼーっとした表情ではあるものの、焦っているようだ。危機察知能力はあるらしい。とりあえずその日は見ているだけにした。何か声をあげているが、聞こえない。

3日目
事態が把握できたのだろう。なんとか鎖を外そうとしているが、例の特別な魔導がかけてあるのでびくともしない。そのうち諦めたのか、うつむいたままぼーっとしていた。

5日目
そろそろお腹が空く頃だろうと思って食事を持っていってやった。もちろん姿は分からないようにローブをしっかりと被っていった。部屋に入ると、びくんと体を震わせておびえている様子だった。愉快だった。
食事は食べなかった。

7日目
代わり映えがしない。ようやく食事には手を出すようになった。相変わらず部屋に入るたびにびくっと体を震わせる。最初は愉快だったが、何度も続くと苛立ってくる。
苛立ちを発散させるのと研究を兼ねて、どこまで耐えられるか、鎖の魔導力を強めてやった。触れる度に火傷するような痛みだ。少しずつ強くなるよう調節した。

10日目
魔導力を強めてやってからの3日間ずっと痛みに悶えていた。初めは弱めにしたつもりだったが、それでも継続した痛みはきついものらしい。食事も持っていってやったが、痛みが酷くうまく食べられないらしい。拙い手つきで皿に手を伸ばしていたが、ぼろぼろにこぼしていた。それを拾って食べるように命令してみた。少し戸惑った様子だったが、そのうちゆっくりと口に運んだ。目が涙で潤んだ。とてもおかしかった。

15日目
ここのところずっと横になったまま動かない。目に光もなく、部屋に入っても反応を示さない。死んでいるのかと思ったので腹に蹴りをいれてやったが、口から液をごほっと吐き出しただけで動かなかったので鎖の魔導力を更に強めてやった。するとようやく反応を示した。悲痛な叫びをあげて、鉄板の上のミミズのように惨めに蠢いた。光をなくした両の目からは大粒の涙が連なり、滝のように流れていく。おもしろかったのでしばらく側で見ていた。



20日目
あの森の中で見られた生き生きとした姿はどこへやら。涙と体液ですっかり汚れた顔を歪ませて、「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返していた。気に喰わなかったので左目に人差し指を突っ込んでぐりぐりと抉りだしてやった。空洞になった左目から赤い涙が流れて面白かった。

25日目
とうとう蹴りを入れても魔導力を強めてみても反応がなくなった。ついに死んだかと思ったが息はあるようだった。とりあえず今日のところは食事だけ置いて、近々始める最終実験のための準備をしておこう。
もはやどこを見ているか分からない右目には相変わらず光はなく、涙だけが頬を伝って流れていた。

30日目
もうこの状態では元に戻すことはかなわないだろう。かといって死なせた後の死体では研究も捗らない。できれば生きたままの体が欲しい。
ボクは少年の体をベッドに仰向けに寝かせ、動けないようまた鎖で何重にも縛り付けた。相変わらず虚空を見つめる目が開いたままで動きがないが、これから始めることに耐えられるか分からないので、念のためだ。
しっかりと、動けないのを確認した後、ぎらりと鋭く光る
鉈を少年の左腕にそっと添える。冷たい刃先が肌にあてられ、びくっと震える。無意識に危機を察知しているのかもしれない。だが、そんなことはもはや意味を為さない。
なにより、ボクの関心が拒絶させない。ボクの胸はかつてないほど高鳴っている。早く、早く、と目に見えない何かがボクの背中を押すのだ。

「ああ、今すぐやってやるよ」

ぶんっと鉈を振り上げ、先ほど刃先をあてていた左腕へと思いきり振り下げる。

 ごとんっ

鈍い音と共にそれは胴を離れた。

「っあああああああああああ!!!!!!!」



左腕の付け根から痛々しく血が流れ、あまりの痛みに少年は背を反らせ、びくびくと痙攣している。
口の端からは少量の泡が流れ落ち、ベッドの上にしみを作る。

今にも鼓膜を破りそうな悲痛な叫びが非常に煩わしかったが、それよりボクは少年から離れた左腕の方が気になっていた。床に落ちてしまった腕を大事に拾い上げて抱えてみた。わりと軽い。こちらも付け根からは血が流れている。思わず舌を這わせたくなるような、細く美しい腕。
これは良い研究材料になりそうだ。
腕だけでこれなら肝や他の部分もさぞや素晴らしいものだろう。先に足や腕をと思っていたが、もう待ちきれない。
赤黒い血液ですっかり染まってしまった鉈の刃先を、未だ痙攣を続ける少年の胸に添える

が・・・

「腕が・・・ある?」


先ほど切り離した腕の部分に、まだ腕があるのだ。しっかりと胴に繋がって、びくびくと動いている。
さっき床に落ちた腕は大事に片手で抱えている。ではこの腕はなんなんだ?
血で染まった腕。新しい腕。獣のような腕。巨大な腕。
軽々と鎖を砕き、起きあがる。
かつては青空のように美しかったが、今は生々しい血で赤黒く染まった髪の隙間から、空洞になっているはずの左目が見える。

目がある。

抉りだしたはずの目がある。血で染まってすっかり真っ赤になった瞳だ。こちらを見ている。あの生気のなかった瞳に光が宿っている。素晴らしい。どうだろうこの姿。人間じゃない腕、人間じゃない瞳。素晴らしい生き物じゃあないか。
さあ、早速捕らえて観察を


(ここまでで文字は終わっている。この後はすっかり固まった血液がページを埋め尽くしているだけのようだ)


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